【2023年最新版】テスラは何がすごいのか。既存自動車メーカーとの違いを解説

目次

テスラ社とは

テスラ: Tesla, Inc.、NASDAQTSLA)は、テキサス州オースティンに本社を置く、アメリカの電動輸送機器およびクリーンエネルギー関連企業である。及び、同社が製造販売する自動車のブランドや自動車自体の通称である。

ウィキペディア(Wikipedia)

テスラは、EV(電気自動車)メーカーです。BEV(Battery Electric Vehicle)市場で、世界No.1のシェアを誇ります。

モデル3、モデルY、モデルX、モデルS、テスラ Semiと少ない車種ながら、先進的なデザインと性能、ブランド力で人気を博しています。

CEOは、スペースXやTwitterのトップでもある、イーロン・マスク氏です。

モデル3
モデルY

さらに、今後EV事業同様に期待ができるのがエネルギー事業です。

エネルギー事業では、自然エネルギーを電気に変換するソーラー、電気を貯める蓄電池を提供しています。

テスラのソーラールーフは、一般的なソーラーとは異なります。

屋根にソーラー機能がついており、デザイン性がよく効率的で自社の電力システムと連携が可能になります。

ソーラールーフ

次に蓄電池では、家庭用のパワーウォールと事業用のメガパックがあります。

テスラはEVを製造する会社のため、バッテリーには強みを持っており性能も一級品です。

蓄電容量に対する価格は他メーカーと比較すると安価です。

パワーウォール(家庭用蓄電池)

また、テスラはVPP(仮想発電所)事業への参入もしています。

VPPとは、各地にある多様なエネルギー資源をまとめて制御し、1つの発電所として運用・管理することです。

家庭や各拠点に設置された蓄電池や太陽光などの電源を集約して、充放電を制御し電力平準化を行います。

つまり、各家庭で蓄電した電気を必要な場所へ、時価で売買できるような取り組みがいつの日かできることを想定しています。

メガパック(事業用蓄電池)

従来の方法(発電所1カ所での電力供給)しかできなかったのは、エネルギーを蓄電できる設備が不足していること、電力供給のオペレーティングシステムがなかったことが原因でした。

そこをテスラはソフトとハードの両方を自社で内製していることで、実現が可能になります。

まだまだ世界中に十分な蓄電池を供給できる生産能力はありませんが、年々増強しています。

そのような未来がくると、電気の価格が下がると考えられます。

テスラの何がすごいのか

テスラの最もすごい点は、自動車業界にサービス型のビジネスモデルを持ち込んだことです。

従来の自動車業界は、基本的に自動車の売切り(※メンテナンスなどのサービスは必要)のビジネスモデルでした。

しかし、テスラのビジネスモデルは自動車を売ったあとも、顧客に十分メリットがあるカタチでお金を稼ぐことができます。

後ほど紹介しますが、スーパーチャージャー(充電設備)やFSD(完全自動運転システム)、テスラ保険等がその一例です。

テスラのミッション

テスラのミッションは「持続可能なエネルギーへ、世界の移行を加速する」です。

これは、従来の化石燃料に頼る社会から、太陽光や風力、水力などの自然エネルギー(持続可能なエネルギー)へ転換することを意味しています。

化石燃料を使用し続けることは、環境面だけでなく、化石燃料の枯渇問題にいつか直面します。

そのような状態に陥った際に手遅れにならないよう取り組んでいるということが分かります。

これらは化石燃料を使用する割合の多い自動車から改革しているだけで、テスラはもっと先を見ているのです。

ロケットを除く、船舶や航空機のエネルギーも将来的には電気にできるというのです。

持続可能なエネルギーに移行した場合のエネルギー量

イーロン・マスク氏は持続可能なエネルギーへの移行が実現した場合、現在の社会よりも効率的な社会になると語っています。

現在社会のエネルギーは、約80%が石油資源からつくられており、その内の30%程度しかエネルギーとして取り出すことができていないというのです。

残りは熱として放出しています。

また、石油を採掘して精製、その後にガソリンスタンドに輸送するという非効率なことをしているのです。

テスラの強み【ビジネスモデル】

世界中にあるスーパーチャージャー網

V3スーパーチャージャー

テスラには高速充電のスーパーチャージャーがあります。15分間で275㎞分の充電が可能です。

2022年12月末の時点で、世界に4,600以上ものステーションが整備されております。

従来のガソリンスタンドのように1回で満タンまでチャージするというものではなく、滞在先(レストランやショッピングモール、休憩場所)や自宅で細かくチャージしていくというのが電気自動車の在り方です。

まだまだ充電時間が受け入れられない方も多くいると思いますが、充電インフラが多くのエリアで整備されれば解決されていく問題だと思います。

V4スーパーチャージャー(次世代)

さらに次世代のスーパーチャージャーも登場する予定です。

615kWの出力が可能になり、他社の自動車への一部開放も想定しているようです。

現行モデルのV3スーパーチャージャーの出力が250kWですので、充電時間も大幅に改善されると思われます。

FSD(完全自動運転)

テスラはFSD(完全自動運転)を開発・販売しています。

世界中を走るテスラ車から情報を吸上げ、日々FSDの精度は向上しています。

自動運転は実現不可能と想像する方も多いと思いますが、テスラの自動運転は驚くべきほど進歩しており、人が運転した際の無事故距離よりもFSDの無事故距離の方が長いという結果も出ています。

下図のFSDの認識精度をみても、かなり高精度であることが分かります。

FSDの周辺認識

FSDは北米で購入型と月額課金型で発売が開始されており、2022年12月時点で28.5万台のパッケージを販売しています。

FSDは、かなり利益率が高いとテスラ役員は語っています。

テスラ保険(自動車保険)

テスラ保険

テスラは米国、中国で自動車保険の事業も開始しています。

従来の保険では、仲介会社が多く存在することや年齢、等級、事故歴などで価格が決まってしまい、安全運転をしていても若いという理由で不当に保険料が高くなっていました。

そういった不透明性をテスラ保険は解消し、自車で標準搭載されているデバイスの情報をリアルタイムで把握して、実際の運転行動から安全性をシステムが判断し保険料を決めます。

さらに、事故をした際には、データが簡単に収集できるため、設計やソフトウェア、修理手順にフィードバックが可能です。

オンライン販売(ディーラーがない)

テスラには、既存の自動車会社のようにディーラーがありません。

オンライン注文のみで購入することができます。

ただし、ショールームや納車場所を含むサービスセンターなどはありますが、販売員が営業をするということはなく、ディーラーの不透明な値下げ交渉もありません。

実際に自動車が見たい人はショールームで確認し、ネットで購入するということです。

また、ディーラーは通常、自動車メーカーとは別会社で運営しているため、顧客データが集まりづらいですが、テスラの場合は、オンライン且つ別会社を経由しないため、顧客データが簡単に手に入ります。

デメリットとしては、担当営業がついて購入・管理したい方や人との関りを大切にする方には印象が悪いかもしれません。

広告費ゼロ

テスラは広告費がゼロです。

TwitterのCEOでもあるイーロン・マスク氏が広告塔になっていることや話題性があり認知度が高いため広告費にお金をかけません。

また、イーロン・マスク氏は、需要が生産を上回っているため、広告を出す必要がないとも述べています。

テスラの強み【生産技術】

垂直統合

テスラは垂直統合型のビジネスモデルを採用しています。

垂直統合とは、開発や製造(原材料・部品・組立品)、販売、サービスを内製化することです。

その反対は水平統合です。これは既存自動車メーカーが採用しています。

水平統合は、数多くの協力企業があり、業務を分担することで成り立っています。

既存の自動車(内燃機関)は、部品点数が多く、全ての部品を製造するコストや技術面をみると水平統合は理にかなっています。

しかし、テスラは創業時から資材の納品に苦労しており、技術面や納期、コストにおいて、内製化しないとイノベーションを起こすほどのEVは作れないと気づいていたのです。

ギガ上海

その一例としてギガ上海では、工場の着工からわずか11カ月でモデル3を納品しています。

これは、サプライヤーに頼った企業には不可能と言っていいと思います。

常識を覆す生産ライン

テスラの生産ラインは過去の慣例や常識が排除されたラインになっています。

これは、イーロン・マスクの考えが大きく影響しています。

イーロン・マスクは、「第一原理思考」です。

第一原理思考とは、慣例や経験に基づいた考え方は排除し、物事を最も基本的な真実まで煮詰める考え方です。

これまで紹介した、持続可能なエネルギー社会への移行、車両のオンライン販売、広告費ゼロ、垂直統合型のビジネスモデルも第一原理思考と言えるでしょう。

ギガプレス

生産ラインでの一例が、車体のフロントとリア部品を製造するためのギガプレスの導入です。

ギガプレスは巨大なダイカストマシン(高さ7.5m*長さ20m)で、プレスの強さは6000トン以上になります。

他のダイカストマシンと同じ原理で使用されますが、規模が桁違いに大きいのです。

従来リアアンダーボディが70個もの部品で構成されており、それぞれ溶接やボルトなどで接合しなければなりませんでした。

工程が多く、品質的にも多くの課題を抱えていました。

しかし、このマシンを導入することで、工程数・作業スペース・生産コストが削減でき、生産スピードや品質も向上させることに成功しました。

従来の車体の製造工程は、圧延鋼板を切断しパーツごとにプレス加工し、成形、各部品を溶接するという工程を経ています。

一方テスラはギガプレスの工程(ダイカスト、トリミング)のみ一体成型で車体を製造します。
※車体のフロントとリア部品以外は従来と同じプレス加工、溶接工程

ギガプレスは、従来の約70個もの部品を1度に製造でき、その70個の部品をつくるために使用していた約300台もの設備を不要にしています。

日本経済新聞

また、トヨタ自動車やVWとの1台当たりの純利益は約5倍も差がついています。

トヨタ自動車は2022年に1,048万台販売したのに対してテスラは、131万台しか販売していません。

販売する車のグレードを考慮するとテスラが有利だと思いますが、それを含めても競争優位性は断トツです。

テスラの将来性

新型モデルの販売

テスラは数年以内に次世代プラットフォームの車両を販売するといわれています。

公式のイベントでも、たびたび話題に上げていますが、2023年3月時点で外観やスペックは判明しておりません。

下図は、仮に世界が電気自動車へ移行した場合のテスラの予想する、セグメント別総販売台数になります。

ベールを被った車体は7億台(700M)としており、この巨大セグメントがまだ発売されていないのです。

これは、低価格帯の車体だと言われております。

車両ラインナップ

次世代プラットフォームでは、自動車の組立て工程を根本から変更し車体の製造コストを従来の50%下げると明言しています。

新ギガファクトリー(メキシコ)の新設

ギガファクトリー(メキシコ)

テスラは、2023年度以降にメキシコにギガファクトリーを新設することを表明しています。

低価格帯の次世代プラットフォームをこのギガファクトリーで生産するといわれています。

メキシコは人件費が安価で、アメリカに近いため好条件だったと思われます。

このギガファクトリーはギガ上海の納期(11ヵ月)よりも短い手番で完成させると責任者は話しています。

その他

テスラは、これまで紹介した事業以外にも面白い取り組みがあります。

テスラボットは人工知能をもった、人型ロボットです。

人の代わりになって単純作業をロボットが実施してくれる未来がくるかもしれません。

テスラボット

また、イーロン・マスクは将来、無人自動運転車のロボタクシーを販売すると明言しています。

ロボタクシーの所有者が顧客を目的地まで移動させた際に移動距離に応じて収入を得るということです。

現在のタクシーの代わりをテスラの完全自動運転システムを利用して格安で提供するということです。

これは、人件費がかからないため格安の交通手段になるとも述べています。

テスラに投資する理由

テスラに投資する理由は、これまで説明した取り組みの根本である、イーロン・マスクの人間性です。
(もちろん、テスラの成長性・財務・バリュエーションやEV市場の将来性も考慮した上でです)

第一原理思考でものごとを考えるため、これ以上分解できない状態に仕上げてビジネスを展開してきました。

生産面で見ると一部部品をのぞき垂直統合型を一貫して採用しています。

既存自動車メーカーのようにサプライヤーに頼って自動車を作るという選択肢もあったと思いますが、持続可能なエネルギー社会に移行するためには、圧倒的な事業スピードと性能、低コスト化が必要と認識していました。

最大限のパフォーマンスを出すためにサプライヤーに頼っていては、それらは達成できないため、厳しい道を選んだのだと思います。

また、EVを普及させるために、走行距離や充電時間、充電インフラ、バッテリーコスト、電力供給などの様々な問題があり、既存自動車メーカーが避けてきた道を自分たちで率先して取り組んできました。

人類の将来のために自己資金でスーパーチャージャーを全米に配置し、ソーラー会社を買収、高性能な蓄電池の開発、電力供給のコントロールシステムの構築と解決策を出してきました。

今後もその姿勢は今後も変わらないと思います。

倒産の危機を何度も立て直し、不可能と言われたEV市場をここまで大きくしたイーロン・マスクなら持続可能なエネルギー社会にできるのではないかと思います。

また、個人的には充電インフラやバッテリー価格の面で、EVがまだ主役にならないのは理解していますが、いずれ維持コスト・性能・環境面の優位性から、内燃機関との主役交代(完全なEV移行ではない)はあると思っています。

その時に、生産コストやシステム、充電網で優位性のあるテスラは、アナリスト予想を超えるような大きな利益がでる時期があると考えています。

目次
閉じる